真っ白な館

思い付いたことを書きます。

SFセミナー2018『百合との遭遇 宮澤伊織インタビュー』講演メモ

講演メモです。
すべての発言を余すことなくメモできた自信がないので、詳細なやつは大野万紀さんのレポートTogetterのまとめといった各種リンクを踏んだり、早川書房のTwitterにリプライ飛ばしたりしてください。
見出しはブログ主が勝手につけました。また、[こんな感じでかっこ]でくくった部分はブログ主の補足です。

はじめに

  • 『裏世界ピクニック』は、異世界ものである点・百合である点などで反応がいい。 読者層がイメージしづらい部分もあるが、「限界百合オタク」に受けたのではないか。
  • 百合企画のオファーをもらったときの第一印象は「気楽に行ってくれるなぁ」。
    • [燃えやすい話題なので]本音は「なにも話したくない」。
  • [SFセミナーの別企画で草野原々さんが喋っていた、]ガガガ文庫の編集が「ライトノベルで百合は売れない」と言っていたことについて
    • そういうところだぞ
  • [宮澤さんは]今回のためにレジュメを作ってきた。
    • 百合好きの間では、「百合を語るな、百合をやれ」という言葉がある。 ここで話したことをつまみぐいして話したら、私はその人を斬らねばならない。

2018年の百合を語る前に、アップデートが必要な概念

  • 百合についての以下のような感覚は、2018年現在では間違っている
  • ①百合=お姉様との女学園もの
    • エス小説」から生まれてきたものだろうが、近年はあまり使われなくなっている [少なくとも、「過半数を占める」という意味での「メジャー」な切り口ではない]
  • ②百合好きの男性は、百合の間に挟まりたいと思っている
    • 殺されるやつ。話を聞かなくていい
  • ③百合は思春期に特有の一過性な感情
    • ヘテロ恋愛観から出てくるもの、気の迷いではない。
    • こんなことを言うと殺されるやつ。スパブロもの
  • ④百合は、同性同士の恋愛に葛藤があるもの
    • あるものもあるが、要素のひとつ。メイン需要ではない。
    • 女の子の恋愛は当たり前のもの[なので、「葛藤がなければ百合ではない」は間違っている]
  • ⑤百合とレズは違う
    • そんな区分はない。区別をつける理由がわからない
  • ⑥男が出てきたら百合ではない
  • ⑦若くて可愛い女の子が大事なんだろう、所詮はルッキズム・男の欲望の発露
    • まじめにやれ。
    • 社会人百合はたくさんある
    • 『メタモルフォーゼの縁側』は少女と老婦人の関係を描いている。
    • comic.webnewtype.com
    • 「顔がいい(かどうか)」、というのは重要な概念
  • ⑧男の描く百合はアウト、所詮は性欲の発露
    • 正気か。
    • 男の描く強い百合はたくさんある。
    • 「BLを女性は書けない」といったら怒られるだろう。
    • ただ、[宮澤さん自身がそうであるように]男の作家には超えられない壁があるので、くやしいところはある。
  • ⑨クレイジーサイコレズ
    • 14年くらいに発祥した概念だが、2018年のいまでは「クレイジー」「サイコ」「レズ」どの要素も解像度をあげないと通用しない。

前提の共有

  • 「女」という概念について
    • 「女」という言葉は、とても強い意味を持つ
    • 例として、男性が女性のことを「女性」や「女の子」ではなく「女」と呼ぶと、とても強いニュアンスの言葉になる
    • 百合における「女」とは、様々な百合の文脈が圧縮されている。引用符が何重にもつく”""女”""。
    • そして、その「女」が複数結びつく。ここが重要 。
  • 「女」と「女」の「関係」、それが百合。
    • 恋愛だけではない。恋に至らないこともあれば、それ以上の関係になることもある 。
  • そこに生じる「巨大不明感情」
    • 16年から出てきたので、元ネタが『シン・ゴジラ』かも?[要出典]
  • 感情の動きがあると、解像度があがる 。解像度があがると強くなる。
  • 強い百合
    • なお、強い百合は宮澤伊織のオリジナルの言葉ではない
  • 人間を描くということ。
    • SF作家が不得意とされていることが多い
  • 架空の女と女を描く。架空の女は実在しないが、架空の女と架空の女の関係は実在する
    • 溝口さんの補足「『人間関係がある種のフィクションで構築されている』ということの裏返しで『フィクションの関係性はリアルである』と 」
  • 性欲や肉体から逃げずに[女を]描くと、つよくなる

「ここすき」の精神について

  • 例:『けものフレンズ』のジャガーマンMAD
    • 好きなものを語る口調
  • 百合とは、緊張感がある一面がある一方で、他人の「すき」にはやさしい
    • ここすき
    • ぼくもすき

2018年の最新コンテンツ

  • バンドリ! ガールズアンドパーティ!』
  • bang-dream.bushimo.jp
    • 25人の「女」による関係が、(ソシャゲなので)頻繁にアップデート/10日に1回くらいのペース
      • 永遠におわらない。最近控えていたが、腰痛で数日寝たきりのときにプレイした際「いいかな」ってなった
    • ソシャゲは、キャラクターがプレイヤーに好意的な描写が多い……が、ガルパはただただ「見せられる」
      • プレイヤーは、ライブハウスのスタッフというポジションではある……が、キャラクターはプレイヤーに何もしてくれない。バレンタインもホワイトデーもなにもない
    • 意図的にやってる
      • ブシロードは、これで世界を取るつもり。英語版もある
    • 最先端の百合
  • リズと青い鳥
  • liz-bluebird.com
    • 溝口さんに「観ておいて」といわれて、前日に観に行った
    • 百合(ファン)の世界では、「壁とか床とかに感情移入(=傍観者)」ということがまれに言われる……が、このアニメは、カメラが具体的に壁をうつす
      • [「『壁や床に感情移入する』をそのままやった」という話ではなく、]カメラの角度の置き方がすごい
    • 一挙手一投足がすごい。女と女の緊張感がすごい
      • [本当にすごいのでみんな観たほうがいい]
  • 脱線:『裏世界ピクニック』は一人称
    • 感情移入を拒否するような描写が、一人称のつよみ。視点人物が意識しないところは描写しない。
      • 『裏世界ピクニック』で空魚は鳥子の顔ばかり見てる
  • SFでは、愚かな登場人物を書きたがらないところがある。パニックホラーはそれができる。
  • 人間は理屈にあわないところをする。うかつなことをする
  • もっとも、こういうのは少女漫画ではごく普通のことだが
  • バーチャルユーチューバー
    • 女性同士の関係性が観られる。ただ、やや口が重くなる。「生もの」なので
    • 毎日更新されるので、毎日何かしらの関係性が振ってくる。
      • 更新されないだけでも「更新されない」ことにすら意味を見出す。更新されないことで、その裏では何かあるのでは……と考えさせられる
    • コンテンツとしてみていいのか、というこわさ。アイドルの世界では、今まで普通にあった事なんだろうけど……
      • 例:イベント前夜にお泊まり配信で生活音を流すだけの配信。頭がおかしくなる

百合を語るということについて

  • 語る側が、解像度をあげないといけない
    • なにをいってるんだろう
  • 2017年の百合世界は、ガンシップが色々とびまわる状態である
    • 2018年は、ガルパという空母やVTuberといったドローンが一挙に押し寄せてくる
  • その中で渡り歩いていくには……
    • 「殺意で描く」。皆殺しにするつもりで
    • ギャングスタ・ラップ [すみません、これは意図がよくわかりませんでした]
    • 『路傍のピクニック』は人間を書くことに注力している

SF百合の可能性。どんなものが可能か

  • 異種族百合。
  • 不在の百合
    • エモい風景はそれだけで百合
      • 溝口さん「はい。……はい?」
    • 風景の百合。『裏世界ピクニック』はそれ。
      • 例:風景から女の子を除く。わだちの先に、朽ち果てた乗り物がある。かつてそこに二人の女の子がいた……エモーション……百合。
    • 宮澤「草原は百合」
    • 溝口「と、思ってる?」
    • 宮澤「創元社ではない」
      • でかい風景はそれだけで百合。『裏世界ピクニック』は理想。
    • 人間の感情に興味はなかったが、百合が俺を人間にしてくれた。
    • 感情に向き合った密度でいえば『裏世界ピクニック』が一番の密度。情景と感情のインパク

音楽が百合

  • 溝口さん「うん、こわくないですよ」
  • 映画『ボーダーライン』のサントラ
  • Sicario

    Sicario

    • 二つのテーマがある
      • 猛獣のぶつかり合う緊張感と、国境地帯のうつくしさ
    • 百合です

今後について

  • 『そいねドリーマー』7月予定。高校生の話 。
    • やっていかざるをえない
  • 小説は速度の遅さがあり、他の百合が大変てごわい。火力に勝てるか
  • 百合はやさしい分野。ただ、女に対するリスペクトがないと大変なことになる。
    • 人間同士をちゃんとやれ。感情のセンスオブワンダー。
    • 届くべきところに届かないのがこわい。