真っ白な館

思い付いたことを書きます。

長谷川和彦『太陽を盗んだ男』(1979)観た

  • 東京を散歩するのが趣味なので、1970年代東京の町並みにまず目を奪われる。
    • 主人公の住むアパートは中央総武線がそばを通り、その線路は大きく弧を描いてるので、おそらく大久保あたりだろう。
    • カーチェイスは場所を特定できなかったが、車が転倒した湾岸のエリアはおそらく青海のコンテナ埠頭
    • 終盤のビルの屋上はパレスサイドビルが映り込んでいたので竹橋周辺なのはほぼ確実。
    • 一方、ラジオ放送が行われてる広場は見覚えがなく、再開発で消滅したエリアかと思われる。
  • 「原爆を作った男」の話という前情報のみ聞いていたので、冒頭のバスジャック事件に面食らう。
    • 天皇に直談判しようとする老人は、主人公と比較したときにまだ目的意識があり、警察への要求を持たない主人公とは対照的。
  • なぜ主人公は原爆を作ったのか、その動機は語られない。というより、動機がないのに作った男の、謎の衝動のみがこの映画では描かれる。風刺的で破滅的。
  • それはそうと、原子力発電所への侵入シーンがすごい。コマ送り的な演出が、モッサリしそうなアクションシーンをとても魅せるものに仕上げてる。

八鍬新之介『窓ぎわのトットちゃん』/北野武『首』観た

2024年は定期的に感想を残していきたい。

八鍬新之介『窓ぎわのトットちゃん』(2023)


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黒柳徹子の同名自伝小説の映画化。1940年~1944年頃に、自由が丘の学校に転校した「トットちゃん」=黒柳徹子の生活を描く。原作は未読。戦中ものとしては『この世界の片隅に』や『ジョジョ・ラビット』あたりと同じ箱に入る。
コロコロと表情を変え、活き活きと動き回るトットちゃんの天真爛漫な様子に魅了されざるをえない。その様子が同時に他人からすると多動性を連想させるところがあり、彼女を受け入れてくれるトモエ学園の皆のやさしさと情愛に心打つものもある。一方、ノンフィクションの映像化という事情もあって、1本の映像作品としては、「ストーリー的な物語の収まりの良さ」という尺度からすると歪なストーリーラインをしており、その歪さは本作独特の魅力として結実している。
シンプルにわかりやすいのは戦争の影だろう。真珠湾攻撃に関するラジオ放送を皮切りに、トットちゃんの生活は少しずつ戦中のそれへと変化していき、きっぷを切る駅員さんがいつの間にかいなくなる(その理由は明言されない)ところから、戦争の影は「死の影」へとその姿を変える。その生活背景が泰明くんの死とオーバーラップすることで、トットちゃんがスローモーションで町中を走るシークエンスにおぞましさが加わることになる。戦場に出征することを「祝う」行進を避けて入り混んだ路地裏では、ガスマスクをつけた子供たちが戦争ごっこに興じ、足をうしなった負傷兵や目の見えない老人の姿が垣間見える。
悲しむべき死が「祝われる」という倒錯を、トットちゃんがどう感じたかは描かれない。が、それを目の当たりにした視聴者にある種の恐怖を抱かせるのは間違いないだろう。

北野武『首』(2023)


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ブラックジョーク映画(……でいい気はするんだけど、こと男色に関してはその文脈で捉えるとあまりよくないと思う。が、意地の悪い見方かもしれないけど、本作における男色って大なり小なりユーモアを意図して描かれてるところあるよね?)。
本作の明確な狂人は織田信長と茂助で、それ以外の人間は、愚鈍か理性的かの違いはあれど、全員まともではある。で、彼らがいるからこそ、その周りにいる秀吉も光秀も、その言動がどこかおもしろく感じてしまう。秀吉がおもしろいのは明らかに演出的なそれなのだが、西島秀俊演じる光秀にユーモアを感じてしまうのは、光秀の愚鈍なキャラクター性が一周回って滑稽だからではあろう。
群像劇的な暴力映画という意味では『アウトレイジ』シリーズも同じ路線な気がするが、『首』の方がギャグ要素強めなのは不思議な気持ちになる。北野武は思い返すと意外と映画でギャグをやりたい人でもあるのかもしれない。
それはそうと、『首』のタイトルロゴ演出がすごくかっこいい(このロゴは公式に流れてるロゴとは異なる書体)。「首」の一画目の点が正に人の首を思わせるな……と思っていたら、まさにそこを横一文字に切り裂くエフェクトがかかる。グッド。

「恋の魔法」としての等身大の冒険 『すずめの戸締まり』感想

前回の記事で書いたとおり、7日(月)に『すずめの戸締まり』を観てきたので、本記事はその感想である。
whiteskunk.hatenablog.com
以下ネタバレあり(どうでもいいが予告編に対するネタバレ感想を注釈に書いた→*1)。
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*1:予告観返してみるとマジでストーリーに忠実に作ってるな。びっくりした。

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【ネタバレなし】『すずめの戸締まり』IMAX先行上映会はよくできたマーケティングだと思う

『すずめの戸締まり』IMAX先行上映会が11月7日(月)に実施された。
自分も応募して当選したから観に行ってきたのだけれど、販促を考えるとよくできた仕組みなのである。
以下、作品の内容には一切触れずのネタバレなしでその辺の感想をまとめておく。
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『リコリス・リコイル』におけるテーマと呼べそうなものに関するメモ

親離れの話であり、「自分なりの信念を持っていれば、その信念は社会正義と等価値になる」という話である。

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普通の人が起こしかねないミスで子どもが死んでしまった(かもしれない)おそろしい世界について

通園バス内に3歳女児 死亡確認 約5時間置き去りか 静岡 牧之原 | NHK
最終的な刑罰は司法の判断を待つ以外になく、それでもニュースで流れてくる限りでは幼稚園側が二重三重に確認を怠って、それが結果として死者を出してしまったということで、社会的に見ても許しがたいことだろう、と思います。
で、記者会見です。ブクマにこんな呟きが流れてきました。


この記事に自分は以下のとおりブクマしました(2022/09/08 19:54に以下コメントを削除して本記事へのリンクに書き換えてます)。

大きな企業だと記者会見の為にメディアトレーニングのプロ雇って社長に指導してもらう位には高ストレスの場での振る舞いって難しいので、あんまあげつらってもなーとは思う(この方への印象は実際最悪だし)

今日の日記は、なんでこういうコメント書いたかについて。

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プログラミングスキルがあまりない人に向けた、Stable Diffusion環境構築における補足

最近話題の画像生成ライブラリ「Stable Diffusion」。前情報ではmidjourneyよりも高精度とのことだけれど、エンジニアじゃない人からすれば、その二つに比べると明らかにとっつきにくい。実行するための環境は自分で用意しなくちゃいけないからだ。
特に面倒くさいのが、画像をベースに画像生成をおこなう(img2img機能を使う)ための環境作りだ。具体的には以下のようなもの。


テキストから画像生成をおこなう(txt2img機能を使う)のは、後述のdiffusersというライブラリが既に出ているので比較的簡単なのだが、img2imgの実行環境を用意するのには1日かかってしまった。自分の知識レベルは

  • Pythonのコードをググりながら書いて実行できる
  • gitの仕組みは知ってるが触ったことはない
  • ___init___.pyとかmain.pyとかsetup.pyとかよく見るけどそれを準備する意味はわかってない

くらいの水準で、各種記事で何をやっているのか理解できなかったからである(特にハマったのがcondaだった。anacondaを入れていなかったので……)。
詰まる度に何度もググってみたりしたが、知識レベルが中途半端な人間向けに懇切丁寧な説明をしてくれる記事は用意されていない。そして、これだけ話題になっていれば、おそらく似たような状況の人が一定数いると想定している。
そのため、この記事では、エンジニアの人が用意してくれた各種記事をベースに、エンジニアでない人がPythonを始めとした各種環境を用意するまでにつまずきそうな部分を、最低限のレベルで解説しておく。

※注意

  • 以下内容は、非エンジニアの人間が環境を用意する過程で理解した内容をメモしたものであり、理解に躓きそうな内容について簡易的な解説をおこなうことを意識しています。そのため、技術的な部分に関する情報の正確性は担保しません。本当に正しい説明を知りたければ別途調べてください。
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