真っ白な館

思い付いたことを書きます。

Clubhouseをやってみた感想

新しいSNSってことでずっと話題になってるClubhouse「まああんまり興味ないけどどういうものかは知っておきたいから触れておかないとなー」と思ってFBに招待してくれる人を募集してみたら、知人に招待してもらえました。それでちまちま時間があればClubhouseを開いていたところ、気がついたら朝の8時まで徹夜でルームで会話してました。その経験含めClubhouseの感想書いておこうと思います。

Clubhouseの概要

いちいち説明しないでもいいかなという気もしますが、一応。
Clubhouseは完全招待制の、音声ベースのSNSですね。今のところiOSiPhoneiPad*1)でしか利用できません。
Clubhouseの特徴を、主にTwitterなどと比較しつつ上げるとするなら以下のとおりになるかと思います。

  1. ホーム画面はTwitterのタイムラインに近い。
    • 閲覧したタイミングで開かれているルーム(チャットルームみたいなもの)が一覧表示される。フォロー状況にもよりますが、100人もフォローしていない状態だと夜9時くらいに10-20ルームくらい。「インスタントな会話ルームが作られているのがわかる」というリアルタイム性が楽しいです。このあたりの感覚はTwitterに近い。
    • 予想外なルームが生まれてることが多いので「え!? 何その部屋!?」みたいなのがめっちゃあります。絶対聴いたことのあるような芸能人が突発部屋開いてるのがよく目立つ。こないだは小室哲哉の突発弾き語り部屋がありました。入ろうとしたら人数制限ではじけれて聴けなかった。多分5万人が上限っぽいです。
  2. 個別ページにはプロフィールが表示されるが、ルームの参加記録などは表示されないので、Twitterマストドンにおけるツイート/トゥートに該当するような個別発言がない(できない)。
    • Twitterだと個別ページに過去のツイート履歴が残りますが、Clubhouseでは個別ページにはプロフィールしか表示されません。つまり、誰をフォローするかどうかみたいな基準になるものが、「プロフィールの記述内容」と「ルームでどんな話をしていた人か(会話が面白い人かどうか)」しかないです。これ、SNSとして考えた時に結構ストロングで、「その人が誰なのか、何をしているのか」を強く押し出さないとフォローされづらい。また、会話に入ったときも「その人がどういう人間なのか」を会話参加者が判断する材料にするのもプロフィールだけ。つまり、実名制(あるいは芸名・筆名を持ってる人)との親和性がものすごく高いです。
  3. その代わり、タイムラインに該当するページには今開かれている会話ルームが表示される。出てくるのは自分の選んだ流行やフォローしてるフレンドから抽出される
    • フォロワー少なくすると話題が全然入ってこないです。なので、最初はガンガンフォローした方が面白い。
    • なお、TLでよく流れてくる「視界にはいる話題が経営かうさんくさそうな自己啓発セミナーかばっかり」というのは流石に言い過ぎだと思います。
      • まあ確かに全体の半分くらいはそういう感じに見えなくもないですが、自分の可視範囲では
        • 作家・イラストレーター・編集者その他諸々のクリエイター部屋
        • アカデミック系の部屋(学芸員がコロナ禍のミュージアムの在り方を話し合う部屋)
        • 無音の作業部屋(○○な人一緒に作業しようとか、初心者集まれ、ここにきた人同士でフォローしあおうぜ、とか)
      • みたいなのが半分くらいを占めてます。うさんくさい部屋しか出てこないならそれはTwitterで言うところのTL構築に失敗しているだけだと思う。
  4. ルーム一覧には、どのルームにどのユーザー(フォロワー)が入っているのかが簡単に表示される
    • 1ルームにつき3−4人の名前が表示されるんですが、デフォルトはそのルームの主催者・会話参加者が表示される一方、自分がフォローしている人がその部屋に参加してたらその人の名前が優先表示されます。だから、「あの人が参加しているから自分も参加しよう」という入室の導線を作っているように思います。
  5. 会話ルームは誰でも作ることができるし、非公開でなければ誰でも聴くことができる。ただし、会話に参加するにはルーム管理者の許可が必要(挙手機能あり)
    • これも面白いポイント、会話ルームを開くのにはそこそこMC的なことが求められるので、大勢を集めるような使い方をする場合はかなりコンテンツ力が求められます。ただ、それはそれとして、上記のとおりルームは友人知人からの参入障壁が低いので、極論「知り合いしか集めない部屋」とか簡単に作れるんですよ。しかも、そういう部屋って人数が少ないので参入障壁が高い。
      • ただ、意外とめちゃくちゃ少ない人数の部屋って結構な頻度で見るので、あんまりきにしないでいい。
    • いきなり知らない人の会話に入るなら、目線があってる必要があります。同業者のルームに入るとか、自分の詳しい話題に入って行くとか。これは2とあわさったときに実名制であることと深く結びついていて、「自分がどんな立場の人間であり、どんな話題に詳しかったか」を明かさないと中々会話には入りづらい、最低限会話がめちゃくちゃ面白かったり質問がめちゃくちゃ的を射ている人である必要があります。

数日触ってみた際の感想

  • まだ招待制であることを考えると、現状では「発信者」と「リスナー」が大きく二分されている
  • 「発信者」は、現状「芸能人」「クリエイター」「経営者」あたりに固まる。つまり、実名か、実名じゃなければ芸名・筆名をちゃんと明かせる人。
  • 「発信者」=会話に入っていこうとするなら、コンテンツ力が求められる。このあたり、「自分はこの立場だからこう考えている」といった主張ができるとコンテンツ力が強まるので、どうしても実名でやるインセンティブが強い。
  • 逆に、リスナーとしているだけなら全然大丈夫。普通に面白い。
  • 「会話に入りづらい」という要素は「クソリプ防止」になってるというメリットがあり、同時に「間違ったことを言ってても止めづらい」というデメリットでもある。

……という感じで、これ聴き専だとたまらない面白さがあるけど発信のモチベがないな……てのが正直なところです。

そのあと1週間後くらい経った段階での感想

上記文章の草稿を書いてから1週間くらい触ったところ、3回くらい会話する側に回り、結果そのうち1回ははじめて話したTwitterのフレンドと朝8時までルームで駄弁ってました。朝8時まで話すのはまあ、ハマってしまったと言って過言ではなかろう。
どんなことがあったかを伝える前に、自分の経歴を簡単に説明しておきます。自分は谷林守名義で創元SF短編賞に応募し、第10回日下三蔵賞を受賞したものの、同賞は審査員賞だと商業誌に掲載されたりはしないので、「作家は名乗っているが商業作品が存在しない」という微妙なポジションにいます。なお受賞作は改稿のうえ『あたらしいサハリンの静止点』という同人誌でKindle unlimitedで配信中。自分のはともかく千葉集さんと織戸久貴さんの受賞作・応募作めちゃくちゃ面白いので読んでください(宣伝)。
www.tsogen.co.jp
note.com
さて、それはそれとして、そういう立場の人間がどんな感じで会話に入ったかというと……

  1. 受賞時の審査員だった書評家・翻訳家の大森望さんと東京創元社小浜徹也さんが深夜に開いていた「翻訳と書評について話す部屋」みたいなのに入ったところ、織戸久貴さん・千葉集さん含めた第三象限メンバーが全員リスナーにいたので、大森産の氏名で全員会話者に指名されて公開処刑を受けた
    • 周りが商業デビューしたプロばっかりのところに商業デビューしてないセミプロが上げられても「書きましょう」「はい……」って感じの会話しかできないので公開処刑ですよこれは
  2. 第三象限メンバーで「りゅうおうのおしごと最新刊を語る部屋」を作って2時間くらい話したけど誰も入ってこなかった。
      • 『りゅうおうのおしごと14』は面白いです。でも前半でBまでいくのはエッチなのでよくないと思います
  3. 大森さんが開いた部屋で作家さんが8人くらい集まってたのが3時くらいに解散したあと、Twitterで相互フォローだった某作家さんの一人が解散後深夜3時くらいに新しく部屋作ったのでふらっと入ったところ、そのまま会話に参加して朝8時までそこに集まったいろんな人と話しまくった

という感じです。
「いや結局作家じゃねえと楽しめねえのかよ」と言われると、すまん。そうかもしれません。「会話参加者」になるにはそういう側面がなくもない。自分自身は全く面白い人間ではありませんが、一応作家を名乗れるので、頻繁に部屋開いてる大森さんの部屋に入ると問答無用で壇上に上げられる&そのときにしれっと作家面できる(商業デビューはしていないが……)というゲタ履いてるのもあって参加できたのかなと思ってます。最低でもルームのオーナーorスピーカーから認知されてるアカウント名にしておくか、そうでないなら「入った部屋で質問タイムとかが発生したときにさっと入っていける&ルームのトピックについて何かしら話せるor場を盛り上げたりすることのできる人」じゃないときついかも。
あと、この「ルームで会話した」って経験は「親しみをおぼえる」きっかけとしてはそこそこ大きくて、このときに会話参加者に「あ、あの人か」って認知された瞬間にその人たち同士で結構距離縮まるってあたらしい交友関係が生まれることが多い印象があります。ありました。
何が言いたいかというと、会話する側に回ることの多い「業界人」同士で交流増やすきっかけとしてClubhouseめちゃくちゃでかく、そういう人はフォロワーが多いので、要はインフルエンサーの間で流行りやすいSNSなんだなと思います。なので、匿名でやろうとしたり、芸名・筆名持ってない人が会話に参加しようとしたりするのはやっぱり結構難しいのかもしれないなとは思う。だたの雑談部屋だとやっぱり知らないひとと会話するのって結構大変。

その他雑感

会話記録が残らないの、多分サーバー費節約ってのもあるんだろうけど、体験の一回性を担保する上でめちゃくちゃでかいんですよね。「あれを聞き逃すかもしれない」っていう気持ちが生まれるのでリテンションレート(定着率)馬鹿上がりしてるだろうし、記録に残らないからこそのフランクな会話ができる、しかし誰かは聞いてるのでめちゃくちゃやべえ失言は流石に抑制される。この辺もよくできてると思った。あと、個人的にはチャット欄がないことには結構不満だったんだけれど(URL貼ったりして共通の話題を振ったりできない)、これ多分ブラウザ開いて離脱させるの防いでるのかなとも思った。微妙に不便な機能(特定の機能を実装しない)のがサービスの差別化に繋がってる。
それと、深夜までダラダラ話す経験で何が一番近いかなって思ったら、多分アレです、SFコンベンションの夜の部。SFセミナー京都SFフェスティバルといったイベントでは、旅館を貸しきって夜通し旅館の部屋なり大広間なりでみんな眠らずにだらだら朝までととりとめのない話を繰り広げるんです。こんなのハマるわ。

*1:なお、Wi-FiモデルのiPadでも利用可能です。ただ、招待されるのは電話番号さえあればいいんですが、招待する側になったときは注意が必要。招待メッセージをiMessageで飛ばす仕組みで、その為にはApple IDに電話番号を紐付けてiMessageでApple IDにサインインする必要があります。Wi-Fiモデルでひっかかる可能性があるのがここ。理由はわからないんですが(iPadでiMessageは日常的に使ってなかったのが原因と勝手に推測している)、アップル側でアクティベーションロックがかかってて何度やってもログインできず半日くらい潰れました。最終的にサポートへの問い合わせで解決。