京都SFフェスティバル2018参加レポート
タイトルの通りです。実は、9月後半に樺太旅行に行ってきたので本当はそっちのレポート記事を上げたいのだが、画像を上げる手間が結構大変なので後回し。
前置き
- 京都SFフェスティバルは京大SF研が主に主催しているSFコンベンション。
- 作家・編集者などの方々を招いて1時間程度の対談・座談会企画を一日に3-4本開催している。
- それらの「本会」が終わったあとは、夜に京都の旅館を貸しきって一晩中参加者*1が自主企画や雑談や物販をする「合宿」がおこなわれる。
- 本会だけなら1000円前後、合宿も参加すると10000円程度であり、素泊まりであることを考えるとそこそこリーズナブルなのが魅力。
- 色んなクラスタの人たちが集まって一日中話ができるというのがとても楽しい。
- 今年の本会企画は3つ。以下、出演者敬称略
- 夜の合宿企画含め、詳細はこちらを参照本会について - 京都SFフェスティバル
- 当日のTwitterレポ
起床~本会
- 前日泊で9hoursに泊まる。
- スタイリッシュなデザインで評判のカプセルホテルです。極端に装飾を廃した真っ白な内装と、ギリギリまで簡素化・システム化したサービスとである種の近未来感的なデザインが魅力。
- 直接予約だと6000円くらいだが、Booking.com経由だと3000円くらいまで値下がりする。前日泊などにおすすめかもしれない。
- 難点があるとすれば朝のエレベーターが遅いこと。2機あるけど、男女でフロアを分けているので実質1機しかなく、朝はシャワーとチェックアウトで上下の行き来が頻繁に発生するため。朝急いでいるときには要注意で、このときは急いでいたから少し困った。
- スタイリッシュなデザインで評判のカプセルホテルです。極端に装飾を廃した真っ白な内装と、ギリギリまで簡素化・システム化したサービスとである種の近未来感的なデザインが魅力。
- 急いでいるというのは、8時45分上映の『若おかみは小学生!』を観るため。早川書房の力丸さんがめっちゃほめてたのでなんなのかと思ってですね。
- 結論からいうとダークホースすぎた。児童小説タッチなデザインとタイトルからそういった方向性を想定していたところ、演出力という点でクリストファー・ノーランやデヴィッド・フィンチャーと同じ箱に入る。不穏な能の音が流れながら発生する交通事故とか、それで死んだ両親を幻覚なのかマジなのかわからない感じで夢見るところとか、高速道路で車に乗ってたら過呼吸起こすとかどぎつい話ガンガンぶちこんでくるのに善性全開の終わり方をするので最高です。あと百合。
- 観終わったら10時30分で、三条から会場に直行。途中で傘を買う。しかし暑い。台風一過なのかなんなのか、暑すぎる。会場についてからも汗ダラダラ流してた。
- 1コマ目は電子書籍企画。商業/売上的な面では事前知識を超える話は出てこなかった(というより世知辛さが前面に出ていて反応に困る)一方、やはり既存の出版形態ではできないことができるという点に作家としては「期待」をしている、という話がおもしろかった。
- たとえば、作品に枚数制限がないということだったり。西崎さんが「雑誌形態のために原稿の長さを調整するというのはおかしな話」という感覚を持っているのは、西崎さんのスタンスがよくわかる。
- 藤井さんの『Gene Mapper』の話も色々興味深い。キャッチコピーを300個作って広告配信した話、2014年にKindleストアが日本でオープンしたときにSFまわりで「一番新しい本」だった話(早川書房でさえ、一番新しい本が当時伊藤計劃だった)、藤井さんと同じようにセルフ出版していた人は1年前にもいたから、藤井さんは運が良かったと思っている話など。
- Amazonパブリッシングでは「ひとつのファイルを作家と編集者が共同で編集して履歴が残る」を実現してる話、円城さんが聞いたらどんな反応するかは気になる。
- 昼飯は友人5人とオシャレっぽいカフェに。使い勝手がよさそうだけど、1時間以内に食べられない&土砂降りの雨で会場に戻るのに遅刻&びちょびちょになった。ランチタイム、1時間30分くらいほしいですね。
- 2コマ目はとび・とり対談。大阪人らしいノリとギャグがおもしろい酉島さんにより結構な頻度で笑いを誘っていた。
- 酉島さんがデビューする前に大森さんに(日本ファンノベ大賞応募作で)認知されていた話とか、一般小説色々書いていたこととか、作風からは想像できない話が結構あるのでびっくりした。
- 個人的には、酉島さんから映画が小説に与えた影響って何があるのかを質問してみたかった気もする。
- あとは飛さんの話があまりなかったな、という印象もあって少し残念かも。
- 「小説は、最初と最後のポーズが決まっているダンスのようなもの」というのは面白い表現だった。
- 対談中に塩澤さんが唐突に現れて『零號琴』見本誌を壇上に置いていったの面白かった。
- 酉島さんとは京都にいた頃関西あんさんぶるでお会いしていたものの、最近は全然お会い/お話しできてなくてすこしさみしい。次会うときはがっつりお話ししたい。
- 酉島さんがデビューする前に大森さんに(日本ファンノベ大賞応募作で)認知されていた話とか、一般小説色々書いていたこととか、作風からは想像できない話が結構あるのでびっくりした。
- 3コマ目は小川一水企画。方向性は合っているのにギリギリでかみあわないノリがすごくなごんだ。
- 前島さんが話を進めようとするなかでマイペースに流れに進行に突っ込みを入れる塩澤さん、小川さんと塩澤さんの間であったあれこれをお互い断片的に忘却しているので殺伐としてるのかギャグなのかわからない話になる二人、壇上で編集と作家の真面目な相談がはじまる流れ……人見知りで連絡をしない塩澤さん、ヤバくならないと連絡しない小川さん、この二人がもっと連絡を密にしていれば5年でおわっていたかも…といった四方山話。
- 面白さって意味だとこれが一番ですね。
- あと、小川さんに関してすごいのは「やりたいからやった」とさらりと発言できることです。自分の力では足りないとか、そういう話を一切しないし、やりたいことを全部詰め込んで結果を出すというのは本当にすごい。創作者として尊敬する。
- 夕食は友人たちとご飯を食べにいく。ステーキがうまかった。
- ところで私最近髭を生やしており、会う人みんなから「ワイルドになって……」「樺太でたくましくなって……」と言われるのちょっとおもしろい。
- 6時半くらいに旅館に到着するが、当然寝部屋の確保はできてなかったので荷物だけ置き、オープニングの前に風呂を軽く浴びる。合宿がはじまると風呂に入る時間がないので、先に入っておくのだ。
合宿~翌朝
- オープニングが終わってディーラーズで改変歴史SFアンソロジーが販売されるのを待つ。即完売だったので待っていてよかった。
- 販売前に5人くらいから「改変歴史SFアンソロジーはいつ売るんですか?」ないし「取り置きはできますか?」と聞かれたがどうして俺に聞くのだろう、俺は書いてないぞ! 売り子は手伝ったことはあるし、みんなほしいのはわかるが冷静になってほしい。
- よく本を貸し借りする友人が、このタイミングで赤野工作『ザ・ビデオ・ゲーム・ウィズ・ノー・ネーム』を俺に貸してくれた。お返しに布教用として持ってきてた『名もなき竜に戦場を、穢れなき姫に楽園を』を布教する。
- 小川一水企画の前半を聞きつつ、樺太土産のビールその1「お米ビール」を開ける。しかしうるさくて耳に音が入ってこない。
- お米ビールはこんな感じ(リンク先の方は私ではありません)。お米です。……お米です?
- 酵母に米由来のものを使っているということなのだろうが、こしひかり越後ビールとかに比べるとその味が全然しない。普通のラガーでした。
- 前島さんに「どうして君はまだ天冥の標シリーズを全部読んでいない!」と怒られた。近々読むの再開しますね……。
- お米ビールはこんな感じ(リンク先の方は私ではありません)。お米です。……お米です?
- 実際読んでいないので途中で離脱してあちこちを徘徊していると、喫煙所に皆月蒼葉氏や隼瀬茅渟氏がいるのを発見。樺太の話と、新興宗教ドキュメンタリーでおもしろいものの話をする。
- 2コマ目はゲンロンSF創作講座企画。小川一水企画もそうだったけど、大広間はうるさくてまともに話が聞けないということで企画部屋3に移動。
- しかしこっちも人がめちゃくちゃ集まって狭かった。運営も大変ですね……。
- ゲンロンSF創作講座の紹介や、登壇者の櫻木みわさん、トキオ・アマサワさん、麦原遼さんがどういう作風のひとかなどが語られる。とりあえずお三方の作品は読んでみることにする。
- 3コマ目の時間は基本的にどこにも参加せず、大広間で早川書房の力丸さんと件の百合企画に関する会合を参加者のみなさん含めて話す。オフレコが多いと思うので詳細は割愛。
- 最後の4コマ目は橋本氏の新しい海外SFの部屋に。参加が遅れたので最初5分くらいを聞き逃してしまった。
- 世界で一番有名なSF創作講座「クラリオン・ワークショップ」の話をしていたので、ゲンロンSF創作講座の流れでその話をしたのだと思う。
- テッド・チャンすら参加に二の足を踏んでいた時期があった話、世界的にその講座(6週間で60万円?)に行こうとする人が絶えない話、アメリカの大学に創作科が存在しているといった創作講座の位置づけなど(話の中には出てこなかったが、村上春樹やスティーヴン・キングは創作科を教えていたはず)。あとは、中国圏におけるSFの話で日本のSF翻訳経由で中国にSFが伝わる話とか。世界はガンガン変わっていってますね。
- その後は大広間に行ってのんべんだらりと色んな人の話を聞く。
- 『改変歴史SFアンソロジー』の曽根氏、皆月氏、大森望氏、オキシタケヒコ氏と2-3時間くらい話していた気がする。この面子は比較的珍しい印象で、あとはっきりとした記憶がそろそろ忘れているあたりです。
- 曽根氏のSF短編に対する知識のバリエーションの広さには脱帽する。
- 曽根氏と皆月氏との話で、小川企画で話題にあがっていた「キャラクターを酷い目にあわせること」に関連した曽根さんや皆月さんの創作スタンスを聞いたりする。また、それにあわせて「自己満足的な展開を避けた一手法」の例として自分が『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』をあげた。
- その横で、ゲンロンSF創作講座の人たちが飛さんをかこんでずっと創作の話をしていたのは印象が強い。すごい。
- 途中からオキシタケヒコさんが合流したら、オキシさんが円城さんと酉島さんの仲の良さをずっと話していた。仲がいいんだなと思った。
- 5時半くらいになって眠気が限界にきたので、寝部屋に移動。1時間ほど寝る。そのあとクロージングが始まったらしいが、めんどくさがった自分は坂永雄一氏とダラダラ話すなどしていた。俺が樺太旅行に出たタイミングでFGOのイベントをしっかり遊べなかった話などした覚えがある。
- その後、合宿会場を出て、友人たちと三条あたりの飯屋まで歩いていく。三条のシズヤで飯を食うのが恒例になりつつある。
- 10人くらいで店に入っていたら、先に離脱なさっていた友人夫妻が先に入っていた。
- 10人くらいでダラダラ話していたものの、そろそろ体力の限界が来ていたので9時半くらいで離脱し、帰路につく。
- でも、正直なところ月曜日が祝日だったことを完全に忘れていた。それがわかってたらみんなと観光につき合っていたのだが……。
- 新幹線に乗って改変歴史SFアンソロジーを読もうとするが、「緑茶が阿片である世界」を読んだあたりで睡魔に負けて爆睡。そのまま自宅に直行し、本当に動けなくなる前に掃除と洗濯を終える。
総括
今回の感想だが、やっぱり楽しい、である。深夜1時くらいになると、どの場所でも誰かがおもしろそうな話をしていて、自分の体が1つしかないのがすごくもどかしくなる。そして色々な方面への意欲を再燃させられる。
色んな趣味をもった色んなひとたちが集まって、多種多様な意見を一気に爆発させるという経験は本当に楽しい。読書会などに参加したときなんかによく感じるが、刺激を与え合うことのできる人間同士が何十人と集まって話ができる場というのは本当に貴重だ。普通に生きていて『「普段はあまり会う機会の少ない友人知人」が何十人とその場に集まって、雑に集まったりばらけたりして色んな話をする』場というのはまずない。旅館を丸々ひとつ貸しきって、旅館の大広間や客室で、5-6人くらいのグループが10個くらいできて、相互に自分の好きな作品の話をしたり、創作について熱い議論を交わしたりすることが可能というのは、本当にいい。いつ来ても楽しいと思う。
特に、ゲンロンSF創作講座の人が大広間で、飛浩隆さんを交え深夜3時くらいまでずっと創作の話をしていたっぽいのはすごく印象に残っている。あの意欲は本当にすごい。遠目からみていただけだったけど、お話しができなかったのが結構残念だ。
余談
proxia.hateblo.jp
来てたなら言ってくださいよ!!! 話したかったよ!!!!!! 新興宗教ドキュメンタリーはおもしろいです。
*1:本会における出演者とそれを聴いている人、運営メンバー全員を分け隔てなく「参加者」としている。