真っ白な館

思い付いたことを書きます。

チャック・パラニューク"Rant"読書メモ1(1-3章)

数年前に紀伊國屋の洋書セールで手に入れて以来全然読んでいなかったので、読書を再度おこなうことにする。
どこかの会社が版権をおさえてしまっていて、完全に翻訳が止まっているhttps://twitter.com/kiichiro/status/17967123242426370 という噂もあるパラニュークなので、こちらに作品の詳細な読書メモの公開にも需要はあるかな、と思いちまちまと投稿していこうと思う。言うまでもなく、以降の記事はすべてネタバレである。
作品は42章(最終章は登場人物一覧なので実質41章)構成。また、正確性には細心の注意を払うが、英語力の問題で私の理解が間違っている可能性もなきにしもあらずなので、それだけはご了承いただきたい。如何せん、一読しただけではストーリーをちゃんと理解してなくて、1章読んだらその章を再度読みなおさないといけない。読書スピードはものすごく遅い。
そんな感じなので、ゆっくり読んでいこうと思う。
※以後、チャック・パラニューク"Rant"のネタバレを多大に含みます。

Rant: The Oral Biography of Buster Casey (English Edition)

Rant: The Oral Biography of Buster Casey (English Edition)

物語の枠組みとしては、カリスマ的指導者にして連続殺人犯バスター・〈ラント〉・ケイシー(Buster “Rant” Casey) の人生を関係者の語り(oral history)によって描く、というもの。

  • あらすじ

Buster “Rant” Casey just may be the most efficient serial killer of our time. A high school rebel, Rant Casey escapes from his small town home for the big city where he becomes the leader of an urban demolition derby called Party Crashing. Rant Casey will die a spectacular highway death, after which his friends gather the testimony needed to build an oral history of his short, violent life. With hilarity, horror, and blazing insight, Rant is a mind-bending vision of the future, as only Chuck Palahniuk could ever imagine.

バスター〈ラント〉ケイシーは私たちの時代において最も影響力のあった連続殺人鬼かもしれない。ラント・ケイシーは小さな街から大都市へと逃げ出し、そこで「パーティ・クラッシュ」という都市破壊競技の指導者になる。ラント・ケイシーは劇的な高速道路事故で死ぬことになり、彼の友人たちは必要な証言を集めて彼の短い暴力に溢れた人生に関するオーラルヒストリーを組み上げる。騒がしく、おそろしい、燃えあがるような洞察に満ちている。『ラント』は、チャック・パラニュークにしか創造できなかった、幻視的な未来のビジョンにあふれている。
(私訳)

1.イントロダクション

車のセールスマン、ウォレンス・ボイヤー(Wallance Boyer)が、飛行機で隣に座ったカウボーイ風の男に話しかける。会話の中で、その男がチケットを格安で手に入れたということがわかり、どうやって手に入れたのかと質問をする。

ウイスキーを飲みながらその男は言う。「まずやらなきゃいけないのは、イカれた閉鎖病棟から逃げ出すことだ」そして彼は言う。あんたはヒッチハイクしなきゃならない。プラスチック製のブーツ以外身につけず、紙を掲げるだけで。。変質者にかみさんと母親をレイプされたくないなら平静でいることだ。
そんなレイプの結果、あんたは抜けた歯を集める子供を育てることになる。そいつは高校を出ると出奔する。夜な夜な活動するカルトを渡り歩く。あんた自身は何万回と車をおしゃかにし、売女崩れみたいな女とくっつくことだ。
そうしてると、あんたの子供は何千人も殺す事になる疫病を閃くことになる。そいつは全世界の指導者をびびらせて、法律を変えちまう。そして最後に、あんたの息子は大きな燃えさかる、容赦ない煉獄の炎に包まれて死ぬことになる。テレビセットの中で、世界中のすべてのひとに見られながら。
彼は言う。「単純だろう」
その男は言う。「そして、あんたが葬式のために死体をかきあつめに行くとなると」そしてウイスキーを口に含む。「航空会社があんたのチケットを格安でくれるってわけだ」
(私訳)

会話のなかで、セールスマンの男は、隣に座った男が「あの」ラント・ケイシーの父親であることに気づく。バスター〈ラント〉ケイシーの二つ名がまたかっこいい。“Werefolf Casey”/the worst Patient Zero in the history of disease/The “super spreader” who’s infected half the country/America’s “Kissing Killer”/“Mad Dog” Casey/America's walking, talking Biological Weapon of Mass Destruction ときた。
ラニューク文体が炸裂しているのがわかって興奮する。

2.守護天使

Rantの故郷、Middletonに訪れる、Party Crasherのメンバー3人。彼ら3人の視点からの語りが入れ替わりつつ入る。キレッキレの台詞回し。歴史家の解説もときおり混じる。もこの歴史家もRantの信奉者っぽい。かれらはRantの故郷を巡礼していて、彼の母親のところにも巡礼に来たが、家の前では保安官、ベーコン・カーライルが警備をしている。3章でわかるが、この保安官は幼少期にラントと仲が悪かった(enemy)。

3.犬ども

少年時代における友人や隣人によって、少年時代のラントの様子が語られる。少年時代のラント(その名前をつけたのは友達のボディ・カーライルである。ラント、母親のアイリーン、父親のチェスターは三人が三人、お互いを別々の名で呼んでいた。ラントのことを母はバディ、父はバスターと呼ぶ。母のことをバスターはママ(mom)と呼び、父はリーンと呼んでいた。父のことをバスターはダッドと呼び母はチェットと呼んでいた。
そして、ラントと彼の祖母イースターが一緒にいたとき、祖母が死ぬ話が語られる。Middletonの冬では犬たちが凶暴になる。祖母は毒蜘蛛に噛まれて倒れ、ラントは他のひとを呼びにその場を離れる。他のひとたちが戻ってきたとき、彼女は興奮した犬に見つかってしまっていて……(ベーコン・カーライル曰く、彼の祖母がラントによる殺人の最初の被害者、という噂があるそうだ。FBIにも伝わっている)。
ボディ・カーライルが語る幼少期の話。ラントは犬のような嗅覚を持っていて、学校や近所のゴミ箱に捨てられている、女性の使用済み生理用ナプキンやタンポンを集め、ボディ・カーライルに見せていた。笑いながら「これはお前の母さんのだよ」と言っていたらしい。ボディ曰く、"If Rant Casey ever fucked my mom, I didn't never have the balls to ask."